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阿賀川支流三沢遡行 [山登り]

暑い日が続きます。

連れ合いの実家である会津に帰省したおり、前々から気になっていた阿賀川流域の三沢を遡行しました。
私の実家である長野県の諏訪地方から佐久に出て、上信越道・関越道・北関東道・東北道と車を走らせて会津まで行ったので、結局この帰省では久しぶりに1000km位を運転したことになります。
幸い大きな渋滞には巻き込まれなかったので、その点は楽でしたが、やはりさすがに疲れました。

帰省の目的は、私の実家の風呂場の改修工事契約の確認・締結と、連れ合いの実家のお墓詣りと義母の実家の法要です。

私の実家は私が上京した年に建て替えたので、築40年を超えています。
そこいら中にガタがきているのは仕方のないところですが、父母も高齢となっていることから、風呂場の改修は早急に手を付ける必要がありました。
昔と異なり、今はユニットバスで対応できますから、コストパフォーマンスもかなり高く、しかも、温水を利用して、室内の暖房にも対応できるとのこと。
それらを含めると費用はそれなりにかかりますが、やむを得ない出費と腹をくくりました。
改修工事はお盆過ぎに着手し、8月中には終わるようです。
結構迅速な対応で感心しました。

家内の実家では、義母の実家の法要(伯父と祖父母)とお墓詣りが中心ですが、実家のお墓参りもこの時期の重要な行事です。
会津ではことのほか先祖を敬い供養する風潮が強く、昨年のように連れ合いの体調が思わしくなく長期間の移動が厳しいなどのやむを得ない理由を除き、お盆の墓参りは欠かしませんでした。
私も、こうした折に連れ合いの実家に帰省し、向こうの親戚と会うのは大変楽しみですので、多少距離はありますが喜んで出かけています。

さて、そんな公式の行事の合間を縫って、前々から狙っていた沢の遡行を実行に移しました。
8年前の夏に、大内宿の背後にそびえる小野岳に登ったことがあり、その折に稜線から眺めた沼尾沼の神秘な姿が強く印象に残りました。
沼尾沼を経由する登山道はかなり前に廃道となり、踏み跡すらも判然としない状況のようです。
しかし、機会があればこの沼に行ってみたい気持ちを拭い去ることができず、それ以来ずっとその機会をうかがってきたのでした。
このあたりの草深い藪を鑑みれば、登山好機は冬枯れの時期。しかし、名にし負う豪雪地帯ですから、真冬に入るのはそれなりの装備が必要です。
従って、春先の残雪期から5月の連休くらいまでの間が最も適していると考えるべきでしょう。
実際その頃に計画を立てたことがありますが、阿賀川(大川)を挟んだ大戸岳から小野岳、そして那須の方に伸びる甲子山までの一帯は、クマが頻繁に出没する地域で、鉄砲撃ち(てっぽうぶち)が腕を競ったという話も残っているところです。
従って、当然地元の親戚は大反対で、腹を空かしたクマが冬眠から覚める時期にわざわざ餌になりに行くことはないといわれました。
そんなわけで荏苒と時を過ごしておりましたが、今回の帰省では少し時間もとれそうな気配。夏であれば熊との遭遇もそれほど頻繁ではなかろうと実行に移すことにしたのです。
しかしその話を身内のみんなにしたら、「今は夏でも熊が出る」と云って、地元で調べたクマの出没マップを見せて止められました。
このマップは実によくできていて、それを見る限り、私が登ろうとしている三沢の付近はかなりのクマの出没がありそうです。
そうはいっても、私にしてみれば長年の懸案事項。とにかく無理はしないで、安全を第一に出かけるからと説き伏せました。
熊もそうだがマムシも出るからとにかく十分注意するように、とのアドバイスを頂き、抜けるような青空と猛暑の中、阿賀川流域の三沢の遡行に出かけました。

国道118号線を下郷方面に走っていき、芦ノ牧温泉を越えて小沼崎トンネルを過ぎると左に大川ダム(若郷湖)方面に下る旧道が分岐します。
この道を下ると左側に大きな駐車場があり、そこに車を置きました。
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モニュメントなどもあり、なかなか立派なスペースです。

身支度を整えて三沢方面に向かう旧道を行きます。
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「関係者以外通行禁止」と「くま出没注意」の看板がありました。
下郷町の指示を無視することになりますが、ゲートの狭い隙間をまたいで越えました(^_^;

旧道を歩いて下り、三沢を渡ると沢沿いの林道が右に分岐します。
misawa03.jpg
ここにも「関係者以外通行禁止」のゲートがありました(ただし、ゲートそのものは上がっています)。
三沢はものすごい藪が生い茂り、かつ堰堤が連続している模様なので、この林道を登って行きました。

左岸に渡り返し、さらに急坂を登っていくと堰堤上の草むらに出ます。
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ここから三沢に降りました。

ハーネス・ヘルメット・8環などを身に着け、スリングとカラビナ数枚を用意し、ザイルもすぐに出せるように準備します。
足回りは、基本は沢の遡行ながら、藪やザレや泥壁をゆくことになるだろうと想定し、いつものフェルト製沢靴ではなく、濡れた路面でもグリップが効くという謳い文句の「ハイパーVソール」のスニーカーを履きました。



さらに靴下は、濡れに強いことをこれまた謳い文句にしているDEXSHELLの防水靴下です。



これに、これまで使い続けてきた、沢用のスパッツをつけました。

以前から、フェルト靴に代わる沢用のシューズに興味があったのですが、ファイブテンのアクアステルスは価格が高いうえに、評判が良かった旧モデルの販売が中止になり、新モデルの評判は今一つらしく、キャラバンが出した「KR_3R」も価格に見合う性能なのかどうか評判が分かれているようです。
いずれにしても15000円以上の出費となるので悩んでいたところ、用途としては全く異なるのですが、先にあげた日進ゴムのハイパーVソールなら価格も安い(2850円)ので試してみる価値があるのではないかと考えた次第です。

さて、三沢に降りてみると、ほとんど人が遡行した気配はなく、沢筋は倒木や藪がかなりうるさい状況です。
大雨による増水の影響を受けたままになっているためなのでしょう、ゴーロ状の流れの中は石や岩も動きやすく、足元の注意は欠かせません。
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それでもさほど水量は多くなく、目立った大きな滝もないため、その点はありがたい限り。
misawa06.jpg

ウワバミソウやアイコ(ミヤマイラクサ)などの山菜が豊富で、最初からこれらを採集する目的で入れば相当の収穫が見込めそうです。
ただし、アイコは素手で触れると結構痛みを感じ、とげなどは刺さっていないのに、いつまでも嫌らしい痛痒さが残るので注意。茹でたり天ぷらにしたりすると全然気にならなくなるのに、本当に不思議なものです(タラの芽などもそうですが)。

ところどころにブナなどの大木があります。
misawa07.jpg

misawa08.jpg

流れを遡っていくと、三段の滝に出合いました。
misawa09.jpg
下の二段は水流沿いに楽々登れましたが、最上段は完全に水草に覆われたツルツルの滝で、ホールド・スタンス共に、確実なものはほとんどありません。
手鍬とかバイルのブレードなら何とか掻き落とせるのではないかと思いますが、今回はそれらを所持しておらず、とても素手では剥がせません。
やむを得ず右岸の泥壁の草付を、シダなどをまとめてつかんで押し付けながら慎重に登って越えました。
このあたりまで来ると、沢の斜度もかなり急になっており、不用意な滑落は絶対に避けねばなりません。

沢筋に戻ってなおも遡行を続けていくと水が涸れました。
しかし、目標の沼尾沼はみあたりません。

実は今回の遡行ではいくつかの失敗をしてしまいました。
その一つは、いつもの山行の時には必ず使っていたカシオのプロトレックを実家に忘れてしまったことです。
山の中での現在位置確認のため、地形図とプロトレックを日頃使用していたため、これは致命的でした。
方位とある程度の高度がわかれば、地形図上での自分の位置を推測することができ、それ以降の行動の目標を立てることができます。
今回はそれができず、果たして沼尾沼からどれほど離れた地点に今いるのか見当がつかないのです。
一面の深い藪の中で、やみくもに歩くのは体力の消耗を促進するだけです。
それでも恐らく沼は間近だろうと藪をかき分けていくと、かすかな踏み跡を発見しました。
踏み跡とはいっても、人間のものではなく、恐らくけもの道と思われます。
しかし、獣とはいえどもある程度踏み跡として残っているということは彼らの生活に即した道であることは間違いないことでしょう。
これを使って登っていくと、果たしてちょっとした原っぱにでました。
misawa10.jpg
恐らく水があるときには彼らのヌタ場となっているのでありましょう。

しかし、いうまでもなく、ここは沼尾沼ではありません。
そこに佇みながら、少し途方にくれました。
このままやみくもに登ってあくまでも沼尾沼を目指してみるか、それとも安全を期して、今回は退却するか。
暫く考えてみましたが、いずれにしても、下るのはこの嫌らしい斜面と、ゴロゴロで不安定な沢筋、ということになります。
非常に心残りではありますが、もしものことがあれば連れ合いを始め身内のみんなに迷惑をかけることになりますから、やむを得ず後者を選択しました。

覚悟はしておりましたが、下りはやはりかなり悪く、懸垂で降りようと思った斜面に支点となる木などがなかったりして往生しました。
沢筋の浮石は、当然のことながら登りよりも始末に悪く、頭くらいの石がたやすく崩れてしまい、それによって足場そのものが崩壊するというていたらくです。
うかつに草をつかむとそれがアイコだったりするので、とげのある山菜取りの際に使っている豚皮の手袋をして下りました。

ようやく今朝の入渓点に下り着き、大川ダム方面を見下ろすと、青い空が広がっていました。
misawa11.jpg

国土地理院のサイトにある三沢から沼尾沼までの地形図です。
misawa.jpg

見た目は簡単そうで、事実、沢自体にそれほどの悪場はありません。ゆえに見くびってしまったのが敗因の全てです。
プロトレックを忘れたのに気付いたとき、取りに戻ればよかったのに、まあ、沢筋を忠実に登れば大丈夫だろうと高をくくってそのままにしてしまった。
また、いつもなら、未知の沢筋に入るときにはブレードのついたバイルを持参していたのに、今回はそれも忘れた。
実に恥ずかしい限りの敗退です。
もう一つ、以前から山歩き用のGPS(ガーミンなど)が欲しいなと思っていましたが、今回の経験から、やはりお金を貯めて買おうとも思っています。
世の中にはせっかくこうした便利なツールが出てきているのに、それを使わずやせ我慢をするのは決してほめられたことではありません。
今回の山行でも、沢の終了地点で現在確認ができていれば沼への登路も判明した可能性が高いのではないかと思います。
何よりも安全に目的を果たすためには最良のツールではないかと感じました。

ところで、今回は幸いなことに熊さんには出会いませんでしたが、マムシは事前情報通り結構いました。
考えてみれば、マムシが子蛇を生むのはこの時期からですから、個体が活発に動くのは無理のないことです。
夏から秋にかけての沢登りでは、結構頻繁に出くわし、若かった頃は捕獲して売りとばしたしたりしたものですが、さすがに私もこの年になって無益な殺生をするつもりもなく、過ぎ去るマムシを温かく見守りました。

最後に、靴と靴下の評価について。

まず靴の方。
ハイパーVソールのフリクションは思った以上に効きます。
濡れた岩でも水苔がなければ全く滑りませんし、滝の登攀も不安なくこなせます。
水苔でぬめった岩ではさすがに滑りますが、これはフェルトソールでも同じことで、謳い文句のもう一つ「油の上でも滑らない」は状況次第というところかもしれません。
ただしアクアステルスでは、水苔でぬめった岩でのフリクションは全く効かないという話を聞きましたから、もしかすると、それよりは効くのではないかと推測します。少なくともフェルトソールの沢靴との間では遜色はないように思われます。
スニーカータイプですから、水はどんどん入ってきます。
靴の中が濡れるのは嫌だ(そういう沢屋はいないと思いますが)という人には不向きかもしれませんが、フェルトソールの沢靴に比べて格段に水はけは良く、しかもすぐに乾きます。
何よりも、泥壁などの登るときのフリクションは絶大ですし、スパッツをすれば尾根筋でもあまり不愉快な思いはせずに済むのではないでしょうか。
何といっても、2850円という価格は魅力的ですね。

それから靴下。
これは当然のことですが、完全に濡れます。
フェルトソールの沢靴を使う際に穿く完全防水の沢用靴下のような感覚でいると裏切られます。
しかし、肌触りは悪くなく、水に濡れた際には冷たさを感じますが、それはすぐに感ぜられなくなりました。
夏の沢歩きであれば問題なく使えますし、雨の中で登山道に水が流れているなどという状況においてはいかんなくその性能を発揮することでしょう。

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のら人

お疲れ様でした。
大変興味深い沢と試着レポート。
有難うございます。勉強になりました。 ^^
ハイパーVは存じていましたが、かなり強力な武器になりそうですね。
しかし、やはり東北の特に里山に近い沢ほど、イヤラシイ面がありそうですね。アルプスの沢よりも難易度が高いのでは?
ともかく、お盆前後は死者の弔いの意味もあるので、自分も引き込まれない様、特に安全第一を期す様にしています。
by のら人 (2016-08-17 20:30) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
のら人さんの輝かしい記録を拝読し、こだわってきた沢とはいい条、ちんけな遡行感想をアップした自分に忸怩たるものを感じます。
ただ、ハイパーVソールの使用感については、なかなか有益な感触をつかめ、これは良かったかなと思っています。
いずれにしても、再挑戦を図らねば、と心を新たにしました。
by 伊閣蝶 (2016-08-17 22:27) 

夏炉冬扇

山の水が冷たいだろうと、気になります。
by 夏炉冬扇 (2016-08-18 19:19) 

tochimochi

お疲れ様でした。
全く記録のない沢に入っていくとはさすがです。
水草に覆われた滝などは見たこともありません。
ハイパーVは私も愛用しています。
濡れた岩でも滑りにくくコスパは高いと思います。
沼尾沼の周辺は緩傾斜の草原のようですからGPSなしに見つけるのは至難の業でしょう。
是非ともご購入下さい。
私も尾瀬の幻の大池を探しに沢から入ったことがありますが全く見当が付きませんでした。
それでも運よく見つけられましたが、あの時GPSがあれば・・・と思っています。

by tochimochi (2016-08-18 21:00) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、おはようございます。
ご心配、ありがとうございます。
山の水は確かに冷たいのですが、猛暑の中の沢登りは爽快感満点です。
by 伊閣蝶 (2016-08-19 07:23) 

伊閣蝶

tochimochiさん、おはようございます。
tochimochiさんもハイパーVをお使いでしたか!
私は今回が初挑戦でしたが、性能も予想以上で、非常にコスパが高いと感心しました。
もう少し使ってみて、感触を確かめるつもりです。
沼尾沼周辺、仰る通りの緩斜面で、この時期は極めて藪が濃く体力を羊毛します。
尾瀬の幻の大滝。私はまだ行ったことがありませんが、tochimochiさんはGPSなしで到達なさったとのこと。
さすがに素晴らしい!
いずれにしても、GPSの購入は前向きに考えたいと思います。
by 伊閣蝶 (2016-08-19 07:28) 

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コメント
by お名前(必須) (2017-03-08 13:59) 

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