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シン・ゴジラを観てきました [映画]

台風の影響で落ち着かないお天気が続きます。
今日も朝から台風9号の影響で風雨が強まり、11時頃から暴風雨となりました。
幸い、出勤時の電車はまともに動いていて、むしろほとんど遅れが出なかったくらいです。
もしかすると、暴風雨を計算に入れて外出を控えた人が結構いたことが要因なのかもしれません。電車遅延の理由のほとんどは人為的なものですからね。
せっかくなので、先日購入したハイパーVソールのスニーカーを履いて出勤しました。
三沢遡行の時にも実感したのですが、さすがに濡れた地面に対するグリップ力は相当の高さです。
激しく水の流れるマンホールのふたやリノリウムの床などでも全く滑ることはなく、むしろがっちりとフリクションが効くように思われました。
黒い色を選んだこともあり、出勤時に履いていてもそれほどの違和感はありません。
ただし、スニーカータイプですから、メッシュから水が浸入し、こうした激しい雨の中では靴の中は盛大に濡れます。
濡れるのが嫌な方は、先日ご紹介した防水型の靴下を穿いた方が宜しいかもしれませんね。
いずれにしても、この価格(2850円)でこの性能はなかなかのものと思います。夏の沢歩きや山歩きにも十分使用に耐えるのではないでしょうか。
ただし、濡れにはほとんど無力ですから、晩秋から冬・初春にかけての沢登りなどに使う場合はきちんとした保温対策を考えた方が良いと思います。ネオプレーン型の完全放水ソックスとの併用がお勧めです。

閑話休題

そんな中、先日、前から気になっていた映画、「シン・ゴジラ」を観てきました。
singozira.jpg

怪獣映画ファンの私としては、やっぱり外せない映画なのです。
期待を込めて出かけ、そして、その期待以上の映画でした。
これは、いわゆる「怪獣映画」というジャンルをはるかに超えた、一つの人間群像劇としてもまれにみる傑作だと思います。

シン・ゴジラの「シン」はsin、つまり「罪」を意味しているのでしょうか。
この映画を観ながら、その「sin」の意味するところを考えもしました。

この映画は、第1作目の「ゴジラ(1954年東宝)」を嚆矢とするこれまでのゴジラ映画を全くなかったものとして企画されています。
「ゴジラ」の名前は、日本ではもちろん、海外においても知れ渡っており、これまでのゴジラ映画では、ある程度それを前提として形作られてきたのですが、この映画では、その第1作に立ち戻り、「大戸島」に伝わる伝説の荒ぶる神として、関係者は初めてその名前を認識する、という設定になっています。
従って、ゴジラ映画という一種の先入観からはフリーとなっているわけであり、初めて観る観客であっても純粋に楽しめる、というコンセプトを目指したのかもしれません。

映画自体の中身の詳細については敢えて触れませんが、先にも書きましたように、これは稀に見る傑作です。できれば是非とも「劇場」で観てほしい、と思います。
1800円を払っても観る価値はある、私はそう思いました。
本多監督による初代ゴジラ同様、本編の人間ドラマ・群像劇の部分の描写は極めて緻密かつリアリスティックであり、こうしたベースをきちんと構築することによって、特撮部分の信憑性をさらに高めている、ともいえるのではないか。
特に、人知を超えた想定外の大規模災害の発生を目の当たりにした閣僚や政府関係者の描写は、よくもここまで踏み込んで表現できたものだと舌を巻きました。

例えば、矢口蘭堂(長谷川博己)内閣官房副長官が、各省庁に巨大不明生物に対する姿勢を「捕獲」「駆除」「排除」の3ケースに分けて対策を考えてくれ、と指示を出した際、「今のってどこの役所に言ったんですか?」とその場に詰めていた各省庁の役人が問うシーンなど、「これは確かにありそうだ」と思わせます。
詰めていた役人は、閣僚会議での決定や指示事項を正確に自分の省庁の幹部に伝えて対策を立てる必要があるのであり、勝手な憶測で課題を持ち帰るわけにはいきません。それを振り分けるのは閣僚の仕事であり、役人は受けた指示に基づいて遺漏なきを期する役割しか与えられていないのですから。

また、極めて切羽詰まった状況にありながら、総理大臣(大杉漣)ですら迅速な意思決定をなし得ないという行政上の手続き面でのもたつき加減も、かなり正確に描写されていました。
独裁国家だとか、大統領といった絶対権力者を頂かない日本という国の運営の不自由さを批判的に描いているようにも見えますが、庵野監督は、こうした意思決定プロセスにおける煩瑣な手続などを全面的に否定しているわけではなく、民主主義には一定のコストが必要不可欠なのだと訴えているようにも思えます。
第3形態に進化した巨大生物への自衛隊からの攻撃を、開始直前に、踏切を横切る避難民(老母を背負った男性)の姿を認めて中止してしまうところや、総理大臣臨時代理となった里見(平泉征)が、国連安保理決議に基づく米国を中心とした多国籍軍による東京都心への熱核攻撃に備えるため国民の疎開を要請されたときの、「住民を疎開をさせるということは、その人の生活を奪うっていうことだ。簡単に言わないでほしい」とつぶやくシーンなどに、庵野監督のそうした想いが反映されているように感じ、私は不覚にも涙ぐんでしまいました。

その熱核攻撃という国連安保理の決議を知らされた時に、それまで冷静な対応を見せていた赤坂内閣総理大臣補佐官(竹之内豊)は、一瞬怒りをたぎらせますが、安保理決議の元に行われた核攻撃である以上、事態収拾後の日本の復興には国連加盟各国の強力かつ絶大なる支援が約束されるはずだと考えます。
こうした考え方をするのも閣僚であるが故のことなのでしょう。

そうした緊迫かつ混沌とした状況の中で、矢口は希望を捨てずに「ヤシオリ作戦(ゴジラの生体原子炉の冷却・凍結・機能停止)」の決行に向けて奔走します。
それを盟友でありライバルでもある泉政調副会長(松尾諭)が強力に支援し、熱核攻撃を受け入れざるを得ない立場に追い込まれた里見総理大臣臨時代理に向かって、「自国(米国)の利益のために他国(日本)の犠牲を強いるのは、覇道です」と再考を強く意見具申するシーン。
政治家として閣僚として、ある種の理想と強い決意を持った若い彼らにこそ、危機的な状況にある日本を救うことができる、そういうメッセージが込めようとしているのかもしれません。
矢口が、上役たる国土交通大臣(矢口健一)の楽観的・希望的観測に対して放つ「先の大戦では、旧日本軍の希望的観測、こうあってほしいという願望により、国民に三百万人もの犠牲者が出ました」「油断は禁物です」というセリフにも、それが垣間見られるように思われました。
そして、熱核攻撃のギリギリまでの延期のためにフランスを動かしたあと、里見臨時代理は駐日仏大使に対して深く頭を下げ続けます。
里見とて、ヒロシマ・ナガサキに続く三度目の核攻撃を日本に加えさせることは決して容認できなかったのでしょう。この描写にも、私は深く胸を打たれました。

さて、そんな重厚な映画ではありますが、ちょっとクスりとした場面ももちろんあります。
東京湾に出来した災害の原因が巨大生物であったことが明らかになった折、三人の生物学者を急遽官邸に召集するのですが、この演者が全員映画監督(犬童一心氏 、原一男氏、緒方明氏)なのです。しかも、それぞれ富野由悠季監督、宮崎駿監督、高畑勲監督のパロディ。そのうえ、全く役に立たない言説を垂れ流すというひどい設定で、総理をして「時間の無駄だった」と吐き捨てさせる。
あんまりじゃないかと思いつつ、不覚にも失笑してしまいました(本来笑えるようなシチュエーションではないのですが)。
監督の出演といえば、故岡本喜八監督が重要な役割を「演じて」おられます。岡本監督を心からリスペクトしている庵野監督の想いが、こんなところにも表れているのでしょう。

この映画には、エンドクレジットに掲載されているだけでも300人を超える俳優が出演しており、他の作品では当然に主役を張れる役者さんが1シーンだけ出演していたりしておりました。
この映画を観るに当たって、私は事前情報を調べたりせず極力潜入観念なしに対峙しようと思ったので、思いがけない役者さんの姿をスクリーンで発見し、何とも云えない感慨に浸ったものです。
というのも、この映画に出演している俳優さんたちにとって、「ゴジラ」と「庵野監督」という二つの名前は閑却すべからざる重みをもっていたように思われたからでした。
映画館で購入した「シン・ゴジラ」のパンフレットを映画を観た後で読んだのですが、主演の長谷川博己や竹之内豊も、この組み合わせに対してある種の尊崇の念すら感じさせるコメントをしています。
恐らく、この300人を超える俳優さんたちも、同じような想いを抱いてこの作品への出演を果たしたのでしょう。

そのエンドクレジットを眺めながら、あれ?この人、どのシーンで出ていたんだろう?などと首をかしげてしまうこともしばしばで、そうしているうちに、クレジットの最後で「野村萬斎」の名前が!
あれ!?萬斎さん、いったいどこに出ていたんだ?
帰宅するまで首をひねりっぱなしで、全くわかりません。
結局思い当たらず、悔しい限りでしたが帰宅してネットでググってみると、なんと「ゴジラ」役だったのでした!
ネタバレになるので詳しくは書きませんが、今回の「シン・ゴジラ」におけるゴジラは、従来の怪獣映画にありがちだった怪獣による積極的な(余り必然性を感じない)街の破壊行動には出ず、もっぱら「何かに向かって移動し(歩き)続ける」という存在でした。
海中にいた時の、オタマジャクシのような深海魚のような第1形態から、川をくねくねと遡行しつつ這い回って徐々に両生類のような第2形態に発展していき、ついにたどたどしいながらも二足歩行(第3形態)に転ずる。
そしていったん東京湾に戻り、さらにパワーアップして完全な姿(第4形態)として鎌倉沖に出現し、またもや東京都心を目指して歩き始める。
そのゴジラの動きは、ただ歩いているだけ(ゆえに「shin(=歩く)・ゴジラ」なのでしょうか)なのに、人知を超え生物の枠組みを超えた神々しささえも感じさせられました。
「スーツアクター」は誰なのだろうか?という疑問が渦巻いたのですが、私の記憶にあるスーツアクターの動きとは正に一線を画したもの。強いて云えば、第一作目の中島春雄さんの動きに近いかな、などと思っておりましたから、これが野村萬斎と知り、さすがにびっくり。
もちろんスーツアクターではなく、モーションキャプチャーだったそうですが、なるほどそうだったのかと得心がいった次第です。
しかしそうなってみると、やはりゴジラが萬斎さんだったということを承知の上で、もう一度この映画を観たくてたまらなくなりましたね。

特撮部分のことを書く余力がなくなってきました。
でも、これはここで書かない方がよろしいのかもしれません。
ものすごい映像です。まさに「筆舌に尽くしがたい」リアルな世界が展開されます。
余りに真に迫り過ぎていて、もしかしたら本当にこういうことが起こる可能性があるのではないか、と思わせるほどです。
この映画のシチュエーションには、東日本大震災と福島原発事故が色濃く反映されていると考えられますし、その意味でゴジラは原発のカリカチュアなのでしょう。
河口から遡上してくる第2形態によって押し上げられる船舶などの情景は、正に東日本大震災の津波の情景を彷彿とさせるものでした。

何だかまとまりのない感想文となってしまいましたが、最後に一つ、私としては大変印象に残ったことがあるので触れさせて頂きます。
矢口を演ずる長谷川博己は、「日本」を「にほん」と発音していました。
このことが私には大変印象深かった。
これは単なる個人的な好き嫌いの話ですが、私は「ニッポン」という発音を非常に嫌悪しているのです。
「ニッポン」という音の響きを聞くと、あの「大日本帝国」という威張りくさって調子ばかりがいい割に中身が空疎な形態を思い起こしてしまう。
だからあの「ニッポン、チャチャチャ」という応援に対しても、正直にいって吐き気を催してしまうほどの嫌悪感を抱いてしまいます(もともと「スポーツ観戦」自体、私は全く好んでおりませんが)。
日本国憲法が「にほんこくけんぽう」であることに、何ともいえない安らぎを感じてしまうのですが、これもこうした感覚に基づくものなのかもしれません。
そんなわけで、ラストで未来に向かって決意を新たにする矢口が、守るべき対象を「にほん」といってくれたことに感動したわけです。
この読み方にしたのが長谷川氏の判断なのか庵野監督の脚本がそうであったのか、それはわかりません。
しかし、このラストの重要な台詞の中で「日本」を「にほん」と発音してくれたことによって、この作品のメッセージ性が私個人には極めて明確に伝わってきました。
それは、前にも書いた、上役たる国土交通大臣の軽口を嗜める矢口の態度にも通底するもののように思われたのです。

映画のラスト。
凍結して動きを止めたゴジラの尻尾には、人のような形をした無数の「芽」が不気味に生え始めていました。
それが何を意味するのか、また、凍結したゴジラをどのように処理するのか、現在私たちが抱えている福島原発の後処理に絡めて想いを馳せるとき、そうした描写がことさら私たちの不安をかき立てるように感ぜられたのでした。


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コメント 10

のら人

ここまで評価されるゴジラ映画。
是非見たくなりました。
政治も深く織り込み、描写も面白そうですね。^^
あと、ハイパーVソールも欲しいです。
by のら人 (2016-08-23 06:48) 

伊閣蝶

のら人さん、こんにちは。
まとまりのない記事で恐縮ですが、実に見ごたえのある映画でした。
もしも機会がございましたら是非!
ハイパーVソール、街歩きでも活用できそうで、安い買い物でした(*^_^*)
by 伊閣蝶 (2016-08-23 12:17) 

夏炉冬扇

ゴジラ、昔夢中でみましたが…
by 夏炉冬扇 (2016-08-23 17:47) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
私も、ゴジラシリーズは、ほとんど観ている世代です。
それでも新たな感動がありました。
by 伊閣蝶 (2016-08-23 19:53) 

tochimochi

私はSFが好きなのですが、怪獣映画は何となく気乗りがしませんでした。
しかし伊閣蝶さんがここまで評価する名作、のら人さん同様俄然関心が湧いてきました。
ニッポンではなくニホン、私も賛成です。

by tochimochi (2016-08-23 23:03) 

いっぷく

私の地元では「町おこし」に利用しようと言う気マンマンです。
特撮、というよりシネコン時代になってからは映画への興味が
下がっていたのですが、やはり実際に観ることで自分の価値観で
評価できるようになりますね。
by いっぷく (2016-08-24 01:10) 

伊閣蝶

tochimochiさん、おはようございます。
怪獣映画というコンセプトは好きなのですが、製作側にどこか子供向けという意識があって、怪獣以外の設定がチャチなものが乱造されていました。
第1作のゴジラが名作だったのは、その辺りにかなり力を入れていたからだと思われますが、この作品も同様です。
正に大人向け、という気がします。
ところで「ニホン」。ご賛同いただき嬉しく存じます(*^_^*)

by 伊閣蝶 (2016-08-24 07:14) 

伊閣蝶

いっぷくさん、おはようございます。
「町おこし」に利用とはちょっと驚きですね。何せ、怪獣映画ですから、街は破壊されてしまうわけで(^^;
私も、あのシネコンはどうも好きになれず映画館から足も遠のきがちですが、やはり作品によっては映画館で観ることが大切と思い直した次第です。
by 伊閣蝶 (2016-08-24 07:16) 

サンフランシスコ人

今夏も、サンフランシスコの近くで、ゴジラ祭りがあります...

http://www.baltheatre.com/event/2f856263236f9de06b853073a3406bea

by サンフランシスコ人 (2017-04-20 00:48) 

サンフランシスコ人

もちろん、伝統的な祭りもあります......

http://www.sanyonews.jp/article/522390
by サンフランシスコ人 (2017-04-26 03:16) 

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