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マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送響によるマーラーの交響曲第9番 [音楽]

小春日和が来たと思ったら真冬並みの寒さが到来するという、この時期特有の不安定な天候が続き、天城山行前から引いていた風邪がなかなか抜けません。
熱も大して出ていなかったので、気合で治す!とばかりに頑張ったのが裏目に出ました。
結局、先週の土曜日、近くの総合病院に出かけ、抗生物質や炎症止めの薬を処方してもらって何とか落ち着いたというところです。
連れ合いや妹などにいわせれば、「還暦にもなれば若いころとは違って自力で治すことなんかできないんだから、最初からおとなしく病院に行けばよかったのに」との、全く仰る通りの御託言。
肝に銘じている次第です。
お昼の楽しみであったウォーキングも、そんなわけで自重していたのですが、昨日久しぶりに出かけてみると、既に晩秋の趣でした。
ityou2016.jpg
公孫樹の黄葉がまぶしい限りです。

さて、いささか古いご報告となりますが、11月27日の日曜日、マリス・ヤンソンス指揮バイエルン放送響によるマーラーの交響曲第9番を聴いてきました。
mahler9.jpg

このコンビによるサントリーホールの公演は、おととしのちょうど今頃、連れ合いと一緒に聴きに行って以来です。
今回は、クラシック音楽を通じ、それも共にマーラー好きということで長年の付き合いとなっている友人と二人で出かけました。
友人は神戸でのこのコンビによる同曲の演奏を既に聴いているとのことで、「すごいですよ!」と私をたきつけます。
それでなくてもマーラーの交響曲の中で(選ぶのは非常に悩ましいのですが)一番好きな第9番を、あの「ヤンソンス&バイエルン放送響」の実演で聴くことができるのです。
風邪で具合は最悪でしたが、そんなものはどこかに忘れてしまうほど、聴く前から興奮してしまいました。

サントリーホールは入口から混雑していて、会場もほぼ満席。
「今回の演奏では途中休憩はありません」としつこいほどの場内放送があり、それを受けてか、男性の手洗いまで長い列ができていました。

チェロとハープに導かれてホルンの物憂げな旋律で始まるAndante comodoの第1楽章が始まると、場内には適度な緊張感を伴う安らぎの時間が流れ始めました。
さざ波のようなビオラに導かれて第2ヴァイオリンが主題を提示し始めると、正にため息をつかんばかりの弦の美しさに陶然とさせられます。

この楽団の弦の素晴らしさは云うまでもないことですが、今回の演奏では特に金管の美しさに瞠目しました。

特にトランペット!
第9番の中で、私は第3楽章に一つのキーポイントを感ずるのですが、この楽章の抒情的な中間部のトランペットの音色(殊に350小節から始まる第1トランペットのソロ)の澄み切って悲しみをたたえたような音が、いまだに耳朶を離れません。
これは本当にトランペットの音なのだろうか?
何というのか黄泉の国から響いてくる天使の歌声(もちろん想像の産物ですが)のような感じさえ受けました。
この主題は終楽章においてさらに大きな広がりを見せて展開されるのですが、その先取りであるこの楽章での現れ方に、改めて深い感動を覚えたところです。
もちろん、複雑で精緻な対位法によって目くるめく展開される第3楽章の荒々しい表現とのコントラストがあればこその美しさではありますが、実演はもとより、CDやレコードでも、これほど美しいトランペットの音色に接したことはありません。
これを聴けただけでも私にとっては得難い演奏会となりました。

この曲、ワルター&ウィーン・フィルによる初演、バルビローリ&ベルリン・フィル、バーンスタイン&ベルリン・フィル、ノイマン&チェコ・フィル、大植英次&NDRなどなど、正に枚挙の暇もないほど数々の名演奏録音が残されています。
実演でも取り上げられる機会が多い曲の一つでしょう。
そうした中でも、今回の演奏は間違いなく最上位のものの一つと感じました。

それから、以前も書いたのですが、この日の聴衆も大変素晴らしい鑑賞態度でした。
演奏中の集中度合いは云うに及ばず、終楽章の最後の弦の最弱音が消えてホール内の残響が収まり、ヤンソンスが両手を下して肩の力を抜くまで、皆固唾をのんでその瞬間を見守っていたのです。
その後、まさに割れんばかりの拍手とブラボーの嵐。
ヤンソンスは何度もアンコールを受けて舞台に戻され、観客の熱い声援に応えていました。
オーケストラが引き上げた後も、ヤンソンスは一人舞台に戻り、何度も挨拶を返します。
こういう素晴らしい大団円は、何度接しても気持ちのいいもので、実演の感動をさらに高めてくれるものでしょう。

なお、今回の公演ではアンコール曲の演奏はありませんでした。
あのマーラーの第9番を、これだけのエネルギーと情熱を以て演じきった指揮者とオーケストラに、そんな余力など残っていようはずもなく、また、この素晴らしい演奏の後にどのようなアンコール曲を持ってきても、所詮それは蛇足に終わってしまうのではないでしょうか。
アンコールを求める拍手もありましたが、私としては「無し」で大いに納得です。

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コメント 16

夏炉冬扇

第9の季節ですね。
お元気で何より。
by 夏炉冬扇 (2016-12-07 16:11) 

サンフランシスコ人

サンフランシスコでは、バイエルン放送響は人気があるとは言えませんね...
by サンフランシスコ人 (2016-12-08 02:13) 

tochimochi

この寒さの原因はラニーニャ現象によるもののようです。
でもそもそもは地球温暖化が原因でしょう。
風邪をひきながらの天城山行でしたか。
確かに年を経ると免疫力も低下して治りにくくなりますね。
私も実感しています。
それでも落ち着いてきたとのこと何よりです。
公孫樹の黄葉、きれいですね。
私の自宅の近くにある大銀杏は先週ですっかり散ってしまいました。
by tochimochi (2016-12-08 08:56) 

のら人

風邪は万病の元、とも言われます。
御自愛くださいませ。 ^^
自分は未だにコート無しで頑張ってます。

by のら人 (2016-12-09 09:29) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんにちは。
もう年の瀬ですね。
風邪はなかなか抜けませんが、頑張っていきたいと思います。
by 伊閣蝶 (2016-12-09 12:21) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、こんにちは。
アメリカには素晴らしいオケがたくさんありますから。
by 伊閣蝶 (2016-12-09 12:22) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんにちは。
環境破壊に伴う気候変動の影響は年々強まってきています。
大変心配ですね。
風邪はなかなか抜けません。
熱は出ていないのですが、喉の痛みと不快感はそのままです。
何とか早くすっきりしたいものです。
公孫樹、私の自宅付近の街路樹もすっかり丸裸になりました。
もう冬なのだなと痛感します。
by 伊閣蝶 (2016-12-09 12:28) 

伊閣蝶

のら人さん、こんにちは。
本当に万病の元ですね。
すっかり気力が減退しています。
それにしてもいまだにコートなしとは素晴らしい!
10年くらい前までは私もそうでしたが(^_^;
by 伊閣蝶 (2016-12-09 12:30) 

いっぷく

抗生物質はよく効きますね
今まで我慢していた自分は何だったのか、なんて思ってしまいます。
でも、飲みきらないと治らない上に耐性ができて厄介になると
言われるので少し緊張しますけどね。
by いっぷく (2016-12-10 00:28) 

ヒロノミンV

関西でも同じ演目のコンサートがあり、行かれた方から「一生の記念になる演奏だった」と聞きました。ヤンソンスは好きな指揮者で、BR,RCOともに録音を集めて効いていますが、やはり、ライブにおいて、より真価が発揮される指揮者だとおもいます。
これを聴き逃したことは、痛恨でした。
by ヒロノミンV (2016-12-10 12:19) 

伊閣蝶

いっぷくさん、こんばんは。
本当に抗生物質は一発です。
恐らく、大人しく横になっていればそれもいらないのでしょうが、仕事に出る人には必須のアイテムかもしれませんね。
by 伊閣蝶 (2016-12-11 00:21) 

伊閣蝶

ヒロノミンVさん、こんばんは。
やはりそういう評価があったのですね。
友人の言もそういう感じでした。
ヤンソンスは日本を気に入っているのか、結構来日されるようです。
それでも、その実演、一期一会に出会えるのはありがたいことでした。
次は是非、足をお運び下さい。
by 伊閣蝶 (2016-12-11 00:26) 

サンフランシスコ人

「バイエルン放送響は人気があるとは言えませんね... 」

BavarianがBarbarianに間違いやすいのでしょうか.....
by サンフランシスコ人 (2017-01-25 07:34) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、こんばんは。

「BavarianがBarbarianに間違いやすいのでしょうか」

なるほど、そういう面もあるのでしょうか。
「野蛮」なオーケストラが繊細な音を出すはずがない、と。
by 伊閣蝶 (2017-01-26 20:31) 

サンフランシスコ人

サンフランシスコでは、外国語でドイツ語を選択する比率が非常に少ないようです...
by サンフランシスコ人 (2017-01-31 08:18) 

サンフランシスコ人

ヤンソンス指揮バイエルン放送響のニューヨーク公演....

http://www.carnegiehall.org/Calendar/2018/5/4/0800/PM/Bavarian-Radio-Symphony-Orchestra/

Friday, May 4, 2018 | 8 PM

ROSSINI William Tell Overture
PROKOFIEV Violin Concerto No. 1
BEETHOVEN Symphony No. 3, "Eroica"

http://www.carnegiehall.org/Calendar/2018/5/5/0800/PM/Bavarian-Radio-Symphony-Orchestra/

Saturday, May 5, 2018 | 8 PM

MAHLER Symphony No. 7
by サンフランシスコ人 (2017-02-15 08:51) 

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