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三隅研次監督、子連れ狼「子を貸し腕貸しつかまつる」 [映画]

またまた暑くなっていますね。
しかし市場は、歴史的な円高、米国経済の低迷、欧州危機、米国に引き続いて仏国でも国債の格下げが起きるのではないかとの懸念、などの影響で、冷え切りまくっています。
特に円高には困りものですが、日米の二年債の利回り較差などから勘案すれば、まだ円が高くなる余地はありそうです。
逆にいえばこの水準(76円半ばから後半)にとどまっているのは、一方的な円高阻止のためには単独介入も辞さないという政府・日銀の姿勢に対する市場の警戒感によるものかもしれません。
いずれにしても、預金保険限度の1000万円を超えた部分などの破綻リスクヘッジのために外貨預金をしている人などは、かなり青ざめているのことでしょう。
まあ、そんな大量な資産を有していない私のようなビンボー人には所詮関係ない話ですが。

さてさて、引き続き映画の話題です。
切腹」のコメントにも書きましたが、私は時代劇が大好きで、特に魅力的な殺陣が描かれた映画には目がありません。

子連れ狼シリーズはその代表的なものでした。

*************** ここから ***************

子連れ狼「子を貸し腕貸しつかまつる」

公開年等 1972年東宝 拝一刀
原 作 小池一雄、小島剛夕
監 督 三隅研次
脚 本 小池一雄
撮 影 牧浦地志
音 楽 桜井英顕
美 術 内藤昭
録 音 林土太郎
照 明 美間博
出 演 若山富三郎、富川晶宏、真山知子、伊藤雄之助

極私的感想-殺陣のエクスタシー…
私は時代劇が大好きだ。それも派手な殺陣が満載されたチャンバラならいうことはない。
こういう映画を観ると、つくづく映画というものは大衆娯楽なんだなあ、と嬉しくなってしまうのだ。
もちろん、なんでもいいというわけではなく、何といっても殺陣、それも合理的かつ必然性のある殺陣が欲しい。
そんなわけで、私の好みは、大河内傳次郎の丹下左膳、嵐寛寿郎の鞍馬天狗、近衛十四郎の柳生十兵衛、萬屋錦之介の宮本武蔵、三船敏郎の三十郎、丹波哲郎の柴左近(三匹の侍)などというところが中心だ。
板東妻三郎の「雄呂血」「血煙高田馬場」とか勝新太郎の座頭市なども素晴らしい。
月形龍之介も大好きだった。
映画の殺陣・立ち回りの話題に、尾上松之助と沢田正二郎を閑却すべからず、とは思いつつ、私はこの両巨頭の映画を観ていない。実に残念だ。
それから時代劇で忘れてはならない敵役や切られ役を演ずるバイプレイヤー。
ここにも、戸上城太郎、五味龍太郎、佐藤京一、福本清三といった名手がいて、画面を引き締めている。

さて、若山富三郎である。
「事件」や「衝動殺人 息子よ」のようなシリアスな演技を中心とした晩年からは、ちょっと想像もつかないかもしれないが、恐らく戦後のチャンバラスターの中では、近衛十四郎に並び称される名手だと思う。
この「子連れ狼」は、漫画アクションに連載された「作:小池一雄」「画:小島剛夕」の劇画で、橋幸夫の主題歌とともに随分話題となった。
当時高校生だった私も、親に隠れて(いやあ、かわいいものだね)読みふけったものだ。
若山富三郎が、己の権勢・権力伸長のために弄した裏柳生の策謀にはめられ妻まで殺された元公儀介錯人拝一刀に扮し、燃えたぎる怒りから復讐の刃をふるうとき、その圧倒的な迫力に、観るものは皆気圧されてしまうことだろう。
拝一刀の役は、若山以外に、萬屋錦之介・田村正和・北大路欣也などが演じているが、風格・迫力そして殺陣の巧さという点で、彼に及ぶものはない。
なにしろ、あの巨体で巧みにトンボを切るのだ。主役級でまともにトンボが切れる役者は、特に戦後激減しており、貴重な存在といえるだろう。
また、獲物(刀など)の扱いも抜群にうまく、太刀や棒を水車のようにくるくる片手で回す様は殊に美しい。
居合いを得意としており、腰が据わっているからこれもぴたりと決まる。
とにかくため息が出るほど、素晴らしい殺陣なのだ。実弟の勝新太郎は「立ち回りは兄ちゃんの方がうまい」と語ったそうだが、宜なるかな。

この映画のカット割りは、殆ど劇画を踏襲しており、三隅監督の絵作りの巧さが冴える。
映画表現を巡る評論の世界には変な偏見があるらしく、どの様な題材をも巧みに料理し、商売になる(観客受けのする)絵を作れる監督を「通俗的」などといって評価の対象から外してしまうことが、間々ある。
三隅監督などは、まさしくそうした評論の弊害を受けたひとりであり、例えば「座頭市物語」や「眠狂四郎炎情剣」のごとき映像美の局地のような映画を撮り、特撮を駆使した「釈迦」や「大魔神怒る」を作ってしまう才能がなぜに評価されないのかと、私には不思議に思えてならない。

*************** ここまで ***************

映画「子連れ狼」シリーズは、6本製作されました。
何れも迫力に満ちたすばらしい作品ですが、私個人としては、ここで取り上げた「子を貸し腕貸しつかまつる」のほか、「三途の川の乳母車」「死に風に向う乳母車」が特にお気に入りです。
監督は何れも三隅研次です。
三隅研次は、大映という娯楽映画の代表格のような会社に所属した職人気質溢れる監督で、B級などと蔑まれる傾向にあったプログラムピクチャーも多数手掛け、何よりも観客を喜ばせる面白くて美しい映像を提供し続けた人でありました。
本文の中にも書きましたが、こういう職人的な監督を、文化人気取りの映画評論家諸氏はほとんど評価していないように思われます。
「本当に映画を観て評論しているのか」と疑問に思うこともしばしばで、所詮「酢豆腐(半可通)」なんじゃないのか、などと悪態をついたこともありました。
まあ、考えてみればそんな人々に腹を立ててもせんないことで、そんな暇があったら、映画を観た方がよっぽどましなのですが。

三隅監督は、その代表作である「剣三部作(「斬る」「剣」「剣鬼」の三作で、何れも市川雷蔵主演)」をご覧になってもお分かりのように、日本刀の美しさに魅入られた映像作家です。
大映はもともと美術は超一流でありましたが、その魅力を如何なく発揮させることができた監督の一人ともいえましょう。
「斬る」における、愛する人を斬首の刑に処さなければならない侍の、水を打った刀に光る木漏れ日の美しさ、「剣鬼」におけるお花畑の美しさとそこを舞台とした壮絶な殺陣、そして、「剣」では主役の市川雷蔵その人の美しさ(特に静止しているときの眉一つ動かさない姿勢のすばらしさ!)などが、三隅監督によって完璧に演出されています。

三隅監督は、1975年に54歳の若さで亡くなりました。
大映倒産後、テレビにおいても必殺シリーズや天皇の世紀(ギャラクシー賞を受賞)で活躍し、松竹大船で「狼よ落日を斬れ」を監督するなど、正にこれから!、という時のことでありました。

ところで、この映画もながらくDVD化が待たれましたが、実現しています。

しかし、これまた一部がカットされており、その点はかなり不満ですね。

蛇足ですが、一刀の息子大五郎が冥府魔道を共に歩くいきさつにからめて、こんな雑文を書いたことがあります。
2006年8月14日の記事を参照のこと
当時はかなり切羽詰まっていたんだなあ、と、久しぶりに読み返して苦笑しました。

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コメント 11

節約王

伊閣蝶様
こんばんは。時代劇特集嬉しく思います。今回は私もよく見ていた”子連れ狼”ですね。若山富三郎さんが映画で演じていたのですね。確かにあの巨体で巧みにトンボを切る事は想像もつかないですね。主役級でまともにトンボが切れる役者は確かに貴重な存在ですね。たいていはスタントマンを使っていると思いますので。ほかに思い当たる方は”千葉真一”くらいでしょうか?。私は近衛十四郎さんと品川隆二さんの大ファンでした。月影兵庫や花山大吉は再放送を毎日見ていました。
子連れ狼は萬屋錦之介さんのシリーズが一番なじみがあります。
月形龍之介さんは主役級の名俳優ですが私は晩年に悪役を演じていたことを今でも覚えています。ほかの俳優さんでは考えられなかった事でしたので今でも強く印象に残っています。

by 節約王 (2011-08-12 20:36) 

伊閣蝶

節約王さん、こんばんは。
子連れ狼、節約王さんもご覧になっておられたとのこと。
嬉しく存じます。
若山富三郎さんの殺陣は、誠に凄絶で美しく、私は大ファンでした。
アクションスターとしては、確かに千葉真一さんはずば抜けていましたが、侍の殺陣、という意味では何といいましょうか、ちょっと格調にかけるかな、などと思わせる部分もありましたね。
それでも、柳生一族の陰謀での十兵衛役は素晴らしかったと思いますが。
近衛十四郎と品川隆二。最高のコンビでしたね。
素浪人月影兵庫と花山大吉、このドラマはこの二人があってのことでした。
萬屋錦之介の子連れ狼も大変な話題を呼びましたね。
若山富三郎さんはそれがかなり不満であったようですが。
月形さんや大河内さんは、主役を退いた後、助演で映画を支える側に回りました。彼らのおかげでどれほど、映画の厚みが増したかわかりません。
その意味では正しく「役者」というべき方々なのでしょう。

by 伊閣蝶 (2011-08-12 23:07) 

hirochiki

昨日は、夜になってもなかなか気温が下がらず本当に暑い一日でした。
こちらは、最高気温が36度を超えたそうです。
今日からお盆ですが、まだしばらくは暑い日が続きそうですね。

亡父は、時代劇が大好きでした。
水戸黄門や銭形平次は、毎週観ていましたね。
子連れ狼は、萬屋錦之介さん主演のテレビドラマを観た記憶があります。
大五郎の演技がとても可愛かったことをよく覚えています。
それにしても、あの勝新太郎さんが「立ち回りは兄ちゃんの方がうまい」とおっしゃるほどですから、迫力ある演技をされるのでしょうね。
by hirochiki (2011-08-13 07:25) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
そちらでも、36度を超えたのですか(>_<)
こちらもなかなか気温が下がりません。
今日も朝から暑いのですが、ちょっと雲が出てきました。
どうやら一雨来そうな雰囲気です。
お父様も時代劇がお好きでしたか。
そういえば、水戸黄門もとうとう終わってしまうようですね。テレビでの時代劇はもう限界なのかもしれません。
萬屋錦之介さんの子連れ狼、大五郎役が話題になりましたが、彼のその後の転落人生は残念でした。
若山富三郎さんの立ち回りはそれは素晴らしいものです。
子連れ狼ももちろんですが、魔界転生の柳生宗矩の立ち回りは豪快な上に大変美しく、命の燃焼のようなものを感じさせました。


by 伊閣蝶 (2011-08-13 11:05) 

きんた

円高の影響はこれからじわじわ出てくると予想されます。震災と同じくくらいのダメージを受ける気がしますが、夏休みの今、海外旅行に目が向きがちですね。
海外移住を真面目に検討しないといけないかもしれません。(+_+)
by きんた (2011-08-13 19:49) 

don

94年の80円が、いまの65円くらいでしょう。(米のインフレ率加味すると)
そういう意味では65円くらいを超えると、過去最高となりますが、
76円でも十分苦しいので、国債発行で内需拡大、日銀の国債引き受け
で金融緩和して、円の希薄化してほしいです。
by don (2011-08-13 21:06) 

伊閣蝶

きんたさん、こんばんは。
円高故に、ドルを買い求める人たちが随分増えているようです。
海外旅行など、具体的な目的があってのことなら良いのでしょうが、円安に触れたときに差益を手にしようと考えてのことであれば、手数料などをきちんと計算に入れておかないと、交換のタイミングが難しくなってしまうかもしれませんね。
海外移住、実行に移すためにはハードルは高そうな気がします。
by 伊閣蝶 (2011-08-13 21:46) 

伊閣蝶

donさん、こんばんは。
ここ10年くらいの間に、ドルなどの資金の量は実体経済の三倍くらいにふくれあがっているということです。
つまり、そうした実態を反映しないお金が様々なところをさまよっていることに問題があるのでしょう。
米国がQE3を実行するのか、大変心配です。
by 伊閣蝶 (2011-08-13 21:51) 

サンフランシスコ人

『子連れ狼 三途の川の乳母車』.....2018年11月11日にサンフランシスコの映画館で上映...

http://www.roxie.com/ai1ec_event/staff-pick-lone-wolf-and-cub-baby-cart-at-the-river-styx/?instance_id=30478
by サンフランシスコ人 (2018-10-21 04:11) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、こんばんは。
こんなドメスティックな映画が、米国で上映されるとは驚きです。
三隅研次監督の映像美が理解されてきているのであれば嬉しいことです。
by 伊閣蝶 (2018-10-21 18:08) 

サンフランシスコ人

やはり、サンフランシスコは映画の街です....
by サンフランシスコ人 (2018-10-22 03:38) 

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