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カラヤン&VPOのブルックナー8番(ライブ) [音楽]

台風4号(グチョル)が大暴れです。
どうしてこの時期に台風が日本の本土に上陸するのか不思議でなりませんが、自然現象は所詮地球の生理ですから、人間辺りがこざかしくこれまでの経験値から予測するなどおこがましいということかもしれませんね。
帰り道、傘は役に立たず、全身ずぶぬれで、靴もぐしょぐしょになって、やっとの思いで家に着きました。
鉄道や飛行機などの交通機関にも大きな影響が出ていて、各地で避難勧告や避難命令が出ている模様です。
神奈川県でも、一時間に100mmというとんでもない降水量が観測されました。
各地ではお怪我をなさった方もたくさんおられるとのこと。
これ以上大きな被害がでないことを祈るばかりです。

カラヤンとウィーン・フィルは、晩年になってカラヤンとBPOとの間がぎくしゃくし始めたころから、頻繁に共演を果たしてきていますが、その最晩年の1988年に録音されたブルックナーの8番も、発売当時かなりの話題となりました。

Amazonあたりのコメントを読むと、かなり毀誉褒貶があるようですね。

私自身は、どうもカラヤン指揮のブルックナーを聴こうという気持ちになれず、当然、このCDも未聴です。
従って、残念ながら感想を述べることもできません。
ただ、カップリングされているシューマンを聴いてみたいような気はするので、もしかすると衝動買いをしてしまうかもしれませんが(^_^;
その折には改めて取り上げることといたしましょう。

さて、それとは別に、1986年に同じくVPOで演奏したブルックナー8番のライブ録音が存在します。
karajanvpo.jpg
カラヤン VPO ブルックナー:交響曲第8番 1986.8.17

友人が所持しているCDで、ためしにカラヤンのブルックナーも聴いてみたら、と貸してくれたものです。

これが、カラヤンのブルックナーか…。

初めてじっくり聴きましたので、その意味ではちょっと感慨深いものがありました。

ブルックナーの交響曲第8番の中で、最も有名なのではないかと思われる第3楽章のアダージョ。
こういう旋律を歌わせるのは、さすがに上手だなと思いました。
しかし、あの第一主題が高揚していきハープの上昇型アルペッジョ(分散和音)が奏でられるとともに紡ぎ出される弦の美しい響き(43小節目)、私が初めてこの曲を聴いた時のシューリヒト&VPOでは、それこそ胸をわしづかみされるほどに感激し涙を流したその響きが、え?同じVPOの音なの?というくらい違って聴こえたのです。

このCDは、ライブとはいえ大変良好な音質で録音されており、それぞれの楽器の音の分離も極めて明瞭です。
そうした良質な音であるのにもかかわらず、この一番の聞かせどころで私の心は共鳴しませんでした。

第1楽章は、いよいよあの8番が始まるのだなという期待感に応える重々しく荘厳な響きが展開されましたが、第2楽章に至って私は全くこの演奏に入っていくことができず、困惑するばかり。
「ドイツの野人・ミヒェル」が田園を夢見て空想に遊ぶ、その、ある意味では軽やかでリズミカルな音楽が、何とも鈍重に感ぜられたのです。
目立ったルバートをかけているようにも思われないのですが、例えばヴァントなどの演奏を聴いた時に感ずる爽やかな印象がまるでない。
先にあげた第三楽章がこの後に来るので、かなりそこで私自身の軌道修正を計ることができましたが、フィナーレに至って、印象はさらに混とんとしてしまいます。
ライブゆえに疲れが出たということもあるのか、アンサンブルに乱れが生じたりするのは仕方がないとしても、コーダで、この曲の4楽章の主題がたがいに重なりながら一気に大団円に向かってなだれ込んでいくキモのところの響きが全くちぐはぐになってしまい、一体カラヤンはここで何をしようとしているのか、正直に申し上げてその意図を計りかねてしまいました。

ブルックナーの音楽は、恐らくブルックナーにしか書くことができないであろう、あの和声の響きに大きな特徴があるのではないかと、私は思っています。
非常に分厚い和音ですが、殊に中音域を様々な楽器で豊かに鳴らすことによって、響きに多彩な色合いを施しており、それが何ともいえないカタルシスを生み出しているのではないでしょうか。
従って、その和声を形作る楽器の一つ一つの音のレベルを相当細かく慎重に調整する必要がある。
チェリビダッケは、その和音に輝きを持たせるため、ホルンやワーグナーチューバの一つ一つの音の強弱を細かくチェックし、完璧にコントロールしていたそうです。
そのホールの客席に、ブルックナーが意図したであろう音の輝きと響きを忠実に伝えるためにそうした努力を惜しまなかったからこそ、あの超絶的な演奏をなし得たのではないかと考えるところです。

それに引き換え、このカラヤン&VPOの8番の演奏からはそうした一種の緊張感が全く伝わってきません。
言い方は悪いのですが、VPOのプレイヤーが気ままに演奏しているのではないか、と思わせるくらいでした。

私はブルックナーの交響曲が大好きです。
その理由は至って簡単で、要するに聴いていて気持がよくなるからにほかなりません。
その中でも第8番はとびきり気持のよくなる曲で、長大な曲にもかかわらず、時間さえあれば繰り返し何度でも聴きたくなってしまうのです。
そんな大好きな曲なのに、このCDをもう一度聴いてみようという気にはなりませんでした。
その時間があるのなら、ヴァント指揮BPOの8番を聴くことでしょう(実際、口直しに聴きました)。
先に書いたいくつかの点について、もう一度聴き返しながら確認すべきところなのですが、どうもそういう気にもなれません。
ということで、申し訳ないことですが、上に書いた感想は最初に聴いた折の印象のみに基づく浅見です。
どうかその点を御斟酌願いたく存じます。

いろいろ申し上げましたが、これはあくまでも私の主観であって、この演奏を最上のものと感ずる方も恐らくたくさんおられるものと思います。
なんといってもカラヤンとVPOなのですから、その演奏は大変立派なものです。
先にも述べましたが、音質も素晴らしいし。

芸術系の趣味の志向、特に音にかかわるもので、ほかの方と趣味や趣向が100%一致するなどということは全くあり得ませんし、50%くらいの一致でも大変稀なことではないかと思います。
畢竟、己の感性の赴くままに好きな音楽や演奏を聴くということ以外に、己の想いや心を満足させることはできないということなのでしょうから。
つまり、この演奏は私の趣味には合わなかったという、ただそれだけのことなのでしょう。
自分の、この曲に対する思い入れや好みを排除して申し上げれば、演奏自体のレベルとしては相当に高いものだと思います。
最晩年のカラヤンの想いを知るうえで、これは貴重なCDともいえましょう。

参考までに、不覚にも涙を流してしまったシューリヒト&VPOのCDをご紹介します。

他にSACDハイブリット盤もでているようですね。

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朝比奈 千歳

巨匠と呼ばれた先人がたが全盛期だった頃はまだ私は生まれてませんので、なかなか手が伸びません。

ブルックナーの交響曲には他の作曲家にはあまりみられない宗教的概念があると思います。ヴァントはそれを十分理解した上で振っているので評価も一定を超えているかと思います。

私は朝比奈盤しか持っていなく、伊閣蝶さんほど細部に渡った聴き方をしていないのであまり言えた事ではないのですが…
チェリビダッケは一度聴いてみたいと思います。
by 朝比奈 千歳 (2012-06-20 02:38) 

hirochiki

昨日は伊閣蝶さんも大変だったようですが、その後大丈夫でしたでしょうか。
私も、早く帰宅するように促されいつもより一時間早く帰宅しました。
雨も風もかなり強く心配しましたが、こちらはそれほど被害もなく過ぎていきました。
何事も、他の方と趣味や趣向がすべて一致することはあり得ませんし
一致しないからこそ色々な意見を聞くことができて良いのではないかと思います。

by hirochiki (2012-06-20 05:46) 

夏炉冬扇

お早うございます。
クラシックはどうも…
パソコンの時は大方宗次郎を聴きつつやってます。
by 夏炉冬扇 (2012-06-20 07:51) 

Cecilia

大変な中でのご帰宅、お疲れ様でした。
こちらはそれほどでもなかったように思いますが、娘たちは学校が休校になったりして早く帰ってきました。でもこれ幸いと二人とも美容院に行ったりしていました。
私は一日家でのんびりしていました。

ブルックナーの8番、聴いてみたくなりました。
カラヤンですが、私がCDを買う基準は声楽家など実際に音を出す人だったので「カラヤンだから」という理由で買ったことがありません。詳しくわからないまでも「サヴァリッシュだから」「べームだから」という理由で買ったことはあるのですが。
でもやっぱり「カラヤンなのだから凄いのだろう。」と思いつつ、その凄さを実感したことがありません。

by Cecilia (2012-06-20 07:59) 

伊閣蝶

朝比奈千歳さん、こんにちは。
ブルックナーの8番は皇帝に献上されましたが、9番は神にささげられました。
ザンクト・フローリアンのオルガニストで敬虔なカトリック信者であったブルックナーには、いつも神の姿が寄り添っていたことでしょう。それゆえに、彼の残した宗教曲はあまりにも直截的すぎて好みが分かれるところなのですが。
ヴァントはむしろブルックナーの音楽をカトリック的な宗教観で捉えることに批判的であったといいます。それゆえに、音楽を通してより純粋にブルックナーの想いを体現し、結果としてブルックナーの信仰心を描き出した、ということも言えるのかもしれませんね。
朝比奈隆のブルックナー。
私はそのほとんどのCDを所持していますし、実演にも何度も足を運び、その都度、抑えきれない感動を味わったものです。
チェリビダッケも、その実演で聴いたブルックナーの8番が今を以て忘れられません。
生前は決してレコード化やCD化を許さなかったチェリビダッケですが、今は多くのCDが発売されています。
機会がございましたら是非ともお聴きください。

by 伊閣蝶 (2012-06-20 12:06) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんにちは。
そちらでは近隣を含め大変な被害が出ているようですね。
hirochiki家ではそれほどの被害もなかったとのことで安堵しました。
私の家も、ベランダの植木鉢がひっくり返ったので、全部家の中に退避するという程度のことはありましたが、さほどの被害もなくホッとしています。
ただ、またまた台風5号がやってくるとのことですので、本当にうんざりですね。
趣味や趣向が一致しないからこそ、様々な意見に接することができる。全く仰る通りです。
人によっては自分の趣味や主張を押し付ける傾向の強い例も見受けられますが、もったいないなあと思ってしまいますね。異なった意見を聞くことにより、より自分の考えを深めることもできるはずなのに、と。

by 伊閣蝶 (2012-06-20 12:07) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんにちは。
PCをお使いになるときは、BGMに宗次郎ですか。これはいい雰囲気だなと想像してしまいました。

by 伊閣蝶 (2012-06-20 12:08) 

伊閣蝶

Ceciliaさん、こんにちは。
そちらではそれほどの被害はなかったとのことで、安堵しました。
お嬢さんは美容院にお出かけになったとのことですが、せっかくのセットは大丈夫でしたか。風が強いから大変だったことと存じます。

ブルックナーの8番は、何と云いましょうか、私にとっては魂に滋養を与えてくれる優しい音楽であるように思っています。
機会がございましたら是非ともお聴きください。

カラヤンだから買う、ということは、私にもあまりありません(高校生の頃はありましたが)。
唯一の例外は、ワグナーの「パルシファル」で、これは恐らくクナッパーツブッシュと並ぶ名演だと思っています。
カラヤンの来日は結構頻繁でしたから、私も大枚をはたいて聴きに行ったことが何度かありますが、1986年10月の折のブラームスの交響曲第1番と第3番の演奏が記憶に残っているくらいで、あとは、ああ高い買い物だったなあ、という残念な想いしかありません。
みんなが凄い凄いというけれども、どこが凄いのか一向に判らない、というのが私の正直な感想です。

by 伊閣蝶 (2012-06-20 12:08) 

tochimochi

クラシックはなかなか親しむ機会がないのですが、時々聞く一節には耳を奪われることがあります。特に「ツァラトゥストラは・・・」や「ワルキューレの・・・」は素晴らしかったです。いつも疑問に思っているのですが、クラシック音楽はどういう情景で作られるのでしょうか。何楽章もある曲はそれなりのストーリーを持っていると思うのですが、作曲者はそれをどうイメージしているのか・・・たぶん誰でも知っていることなのかもしれませんが、私にはいまだに分かりません。

by tochimochi (2012-06-20 18:32) 

伊閣蝶

「ツァラトゥストラ」「ワルキューレ」、うーん、tochimochiさん、なかなか通ではありませんか。
作曲家がどのように曲を作るのか、これはやはり千差万別なのでしょうが、オペラのような題材が具体的に存在する場合は、そのストーリーに合わせて、まず全体のスケッチを描くことが多いのではないかと思います。
その中で、登場人物ごとのライトモチーフも構想されてくる、という感じなのではないかと。
ポップス系でも、一つのテーマを元にアルバムを作ることはよくあることで、大要はそれと同じことなのかもしれませんね。ロックなどでは、かなり強固な統一テーマを持ったアルバムも存在しますから、これは一つの交響曲をなどを作るのと同じことのようにも思います。
ただ、クラシックの場合、奏でられる旋律を作る際に、ハーモニーやポリフォニーの観点から全体のバランスを考えなければならないので、やはり音楽的なセオリーを元に作っていくことになります。
そうした構造の中に当てはめながら、如何に自分の頭に描いた世界を構築するかがカギでしょうね。
その意味では小説などを書くのとあまり変わらないことなのかもしれません。
作家によって、描き出される世界も違えば、表現の方法も異なるという意味でも(鴎外とか漱石とか一葉とか)。
などと書いてみましたが、正直なところ、自分の乏しい体験をベースにした浅見ですので、機会があったら作曲家の友達にも訊いてみようかな、と思っています。
by 伊閣蝶 (2012-06-20 18:53) 

のら人

台風酷かったですね。
昨日は早めに帰ったので、ギリギリセーフでした。 ^^
直ぐまた次の台風もスタンバイしているようなので、注意ですね。
by のら人 (2012-06-20 19:34) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
台風4号はうまくさけられたとのこと。何よりでした。
今は嵐の前の静けさ、というところでしょうか。
この時期に台風の上陸は本当に願い下げにして欲しいところです。

by 伊閣蝶 (2012-06-20 23:59) 

ムース

いよいよブル8ですか。なかなか長大なので、聞き比べは敬遠してしまいます。たまたま私はカラヤンBPOが最初だったので、カラヤンには悪い印象は持っていません。尤も、カラヤンの評価が低いのを知るのはその後のことです。シューリヒトも良いですね。もっとも、いかんせん速すぎて、その速いのが良いのではあるのですが、どうにも不自然な印象を拭えませんでした(しかしその甲斐もあって1枚になりました)。クナ指揮ミュンヘンも一応耳を通しました。改訂版ですが、なかなかつぼを得た名演です。ヴァントも朝比奈も良いのでしょうが、聴いていません。いや、ブル8を聴く時間的・精神的ゆとりがないのかもしれません。指揮者誰はともかく、一度はライブで聴いてみたいとは思っています。
by ムース (2012-06-21 22:59) 

伊閣蝶

ムースさん、こんばんは。
さすがにたくさんの演奏をお聴きですね。
ブルックナーの8番は、その意味ではたくさんの名演奏が目白押しですので、好みが分散するのはしぜんの成り行きとも思います。
私個人としては、ここに掲げたシューリヒトとヴァント、それからチェリビダッケ(これは実演を聴いてしまいましたからどうしても上位にせざるを得ませんが)、朝比奈(これも実演を聴いてしまいました)、あたりにどうしても軍配を上げざるを得ません。
ブルックナーの8番は、確かに長い曲ですが、私のように、通勤だけでゆうに一時間以上かかる人間にはそれほどの長さには感ぜられないようです。

by 伊閣蝶 (2012-06-21 23:47) 

don

4号の日は、会社は昼から帰宅命令が出ました。
いつも通ってる岩盤浴に行って、至福の時を過ごしました。

せっかくなので早く家に帰ってもしょうがないですし^^;
by don (2012-06-23 14:13) 

伊閣蝶

donさん、こんばんは。
4号の時は昼から帰宅命令が出たのですか。
素晴らしい会社ですね。
岩盤浴、私はまだ一度しか体験していませんが、何度か通うと癖になるとのこと。
でも、家に早く帰ってもしょうがないとは、ご家族に叱られませんか(^^;
by 伊閣蝶 (2012-06-23 18:09) 

サンフランシスコ人

1989年に、カラヤンとウィーン・フィルは、ブルックナーの8番をニューヨークで取り上げました........ 実際にカーネギー・ホールで演奏を聴いた女性は、私に大感激したと言っていました....
by サンフランシスコ人 (2016-04-06 07:36) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、おはようございます。
いつもコメントをありがとうございます。
カラヤンの演奏をお聴きになった女性のご友人、素晴らしい時を過ごされましたね。
by 伊閣蝶 (2016-04-07 07:14) 

サンフランシスコ人

カラヤンが死ぬ数ヶ月前でした.....
by サンフランシスコ人 (2016-04-08 01:16) 

伊閣蝶

サンフランシスコ人さん、こんばんは。
いわばカラヤンの「白鳥の歌」をお聴きになったということですね。
by 伊閣蝶 (2016-04-08 23:16) 

サンフランシスコ人

「カラヤンの演奏をお聴きになった女性のご友人...」

友人でなく(潜在的な)恋人候補でした...
by サンフランシスコ人 (2016-04-13 01:03) 

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