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実録連合赤軍「あさま山荘への道程」(若松孝二監督) [映画]

三連休となりましたが、疲れがあったのか体調が優れず、しかも、お尻にデキモノ(いわゆる「ねぶと」です)ができてしまい、残念な休日となってしまいました。
知人からの勧めもあり、四日市市民オペラによる「椿姫」を鑑賞する予定でしたが、それも叶わず誠に無念極まりません。

そんな状況で、この連休は大人しく在宅し、洗濯や布団干し、アイロンがけ、掃除などのほか、ぼつぼつと衣替えなどをしておりました。
秋の気配は漸く里にも降りてきて、近くの樹々も紅葉しています。
kouyou1104.jpg
冷え込みもきつくなってきましたので、昨日、コタツをたててしまいました。
もちろん、電源は入れていませんが、それでもコタツの中に足を入れていれば随分暖かなものです。

さて、そんな事情から在宅しておりましたので、久しぶりにブルックナーやモーツァルトなどを聴きながら過ごしていましたが、CDラックの中に入れておいた若松孝二監督作品「実録連合赤軍」のDVDが目にとまり、久しぶりに観たところです。


「実録」と銘打っているだけあって、この事件に至るまでの背景やその後の展開、そして関係者を実名で登場させるなど、史実がほぼ忠実に映像化されています。
しかし、おのおのの事件などに関する時間経過が前後するなど若干の調整が施されたほか、あさま山荘内部でのシーンにはフィクションが混ぜられているようです。

例えば、1972年2月28日の、警察による強行突破直前のシーンなどは、その象徴的なものではないでしょうか。

握り飯を食べながら、板東がふとつぶやきます。
「同志たちにも食べさせてやりたかったな」。

坂口が次のように語ります。
「流れたあいつらの血を受け継ぐのが俺たちの戦いだ。俺たちの借りは死んだ同志たちにある。この借りを返そう」。

吉野がそれを受けて、
「おとし前はつけよう」

と呟いたとき、ここまでのやりとりを黙って聞いていた加藤元久が絶叫します。
「何を言ってんだよ!
今さら落とし前がつけられるのかよ!
俺たちみんな、勇気がなかったんだよ!
オレもあんたも、あんたも、坂口さんあんたも!
勇気がなかったんだよ!!」。


この部分は恐らくフィクションでしょう。
加藤元久のいう「勇気」が何を指すのか。様々な考察が成り立つのだろうと思います。
同志を「総括援助」や「処刑」の名の下に、その犠牲者の同志たる自らの手で虐殺した行為、そこに至る前にそれを(理不尽と思いつつも)止めるべき声を上げられなかった、そうしたことでもありましょうし、見果てぬ革命の夢の中で本来の目指すべき道を誤りながら引き返す勇気を持たなかった、そういうことでもありましょうか。
森や永田らの常軌を逸した言動やそれに基づく恫喝・威嚇・暴力などに対しても、それに異を唱えることができなかったことなどももちろんありましょう。
下手な行動に出れば「総括」された同志たちと同じ目に遭わされるかもしれない、という恐怖が目睫に迫っていたということもあったのでしょう。

いずれにしても、この発言を、この最後の段階で、一番年少であった加藤元久に言わせた、というところが、(たとえフィクションであったとしても)非常な重みを私に感じさせる所以です。
因に、加藤元久は私と同年代。
当時、高校受験を前にしていながら、この事件のテレビ中継に目を釘付けにされた私は、そのことに非常な衝撃を受けたものです。
それから わたしたちは 大きくなった
こどもだった わたしたちは みな大きく なった
わたしたちの うちの一人は 留学のために 羽田をたったばかりで
もう一人は 72年の年の2月の 暗い山で 道にまよった(樹村みのり「贈り物」)

あの「あさま山荘事件」、それを引き起こした5人のうち坂東國男は現在も逃亡中であり、国際指名手配を受けています。
彼の逮捕がなされない限り、この事件は終わりません。
そうした中で、山岳ベース事件を主題とした手記や著述は現在でも続いていると聞きます。
若松監督のこの作品は、それ故にこそ大きな意義も持つものなのではないでしょうか。
同じ題材を扱った高橋伴明監督に故立松和平原作の「光の雨」という映画があり、同じく非常な重さを以て訴えかける力がありましたが、やはり正面から取り組んだ若松監督のこの作品の方に軍配が上がるかな、という気がします。

余談ですが、若松監督は、この映画のクライマックス、あさま山荘での銃撃戦を描くために自らの別荘を使い、それを破壊することで映像化したとのこと。
彼の執念のほどが伺えますね。

この映画、観るほどに新たな発見があるほどの力作だと思います。
俳優たちは、実際にかなり追いつめられた環境におかれていたそうで、どこまでが演技なのかわからないくらいの熱演ばかりでした。
台詞回しも非常に長く、それを一気に演ずるのには相当な緊張感も必要だったことでしょう。
中でも、永田洋子を演じた並木愛枝の演技は絶品です。恐ろしいばかりの迫真性がありました。
それから、ジム・オルークの音楽も極めて秀逸でした。
もともと若松監督の大ファンで、その映画のすべてを観ていたというジム・オルークが、若松監督に懇願して実現したとのこと。
その熱意がひしひしと感ぜられる音楽でした。
とはいっても、今の映画にありがちな、のべつまくなしメロディを流し続けるといった体のものでは当然なく、非常に計算され的確な音響設計に基づいたもの。
ジム・オルークは武満徹さんの大ファンでもあったそうですから、それもまた蓋し当然のことかもしれませんね。
そしてそれは、映画音楽や音響効果について極めて高いレベルでコントロールしようと試みてきた若松監督の意思にも、最高の表現力を以て応えたものとも言えるのではないでしょうか。

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hirochiki

急に気温が下がったりまた少し暖かくなったりで体調管理が大変ですよね。
夏の疲れも出てしまわれたのかもしれません。
その後、体調はいかがですか。
くれぐれもお大事になさって下さいね。
by hirochiki (2013-11-05 05:42) 

のら人

おはようございます。

客観的事実は、同志を殺したということであり、
同志に写っていた「鬼」「おかみ」という姿こそ、
私達の姿、本当の姿であると思うのです。
その革命的でも、美しいものでもない姿を、
自分の真の姿と認め、否定し、否定しぬくことによって初めて、
総括の第一歩が始まると思います。
(坂東国男「永田洋子さんへの手紙」)

総括とは、オウムで言えば「ポワ」みたいなものでしょうか。 ^^;
彼は逃亡の果てに、今どうしているのか。既に尽き果てているのか。赤い国?でノンビリ生きているのか。興味はあります。
オデキの方ですが、お大事になさってください。
by のら人 (2013-11-05 09:01) 

伊閣蝶

hirochikiさん、こんばんは。
ご心配を頂き、ありがとうございました。
仰る通り、気温の変動が著しく体がついていかなかったようです。
おかげさまでだいぶ快復してきました。
あまり無理をしないように気をつけたいと思います。
hirochikiさんも、くれぐれもご注意下さいませ。
by 伊閣蝶 (2013-11-05 18:50) 

伊閣蝶

のら人さん、こんばんは。
のら人さんも「永田洋子さんへの手紙」をお読みでしたか。
これに対する永田の返信「獄中からの手紙」も興味深いものがありました。
連合赤軍とオウム真理教には共通点があるのではないか、との指摘もなされ、ある意味では首肯できる部分もありそうな気がします。
坂東がいまどのような状況なのか。私も非常に興味がありますね。

ところでねぶとですが、だいぶ気にならなくなってきました。
ご心配頂きありがとうございます。
by 伊閣蝶 (2013-11-05 18:57) 

tochimochi

浅間山荘事件の後連合赤軍という本が出版され、山荘内での総括という名のリンチで仲間を殺戮していった事を知りました。
その中で声を上げることは確かに困難だったのでしょう。ただ仲間の死を見ても心が動かなかった…ある意味集団洗脳のような状態は本当にショックでした。
今でもそれに近いような事件が起こっています。初めのうちなら気づけるはずと思うのですが、最初の勇気が大事と感じています。

by tochimochi (2013-11-05 19:30) 

伊閣蝶

tochimochiさん、こんばんは。
全く仰る通りです。
一種のマインドコントロール状態だったのでしょう。
実行犯たちが逮捕・収監され、その集団洗脳状態から覚めたときに、自分の行動をある意味冷静に振り返るところも似ていますね。
また、自分が「総括」の対象にならないように、ほかの同志を攻撃する姿は、今の「いじめ」と非常に良く似た現象のようにも思えます。
その意味では、これは決して過ぎ去った事件ではないと考えます。
最初の勇気が大事、正しく仰る通りです。
by 伊閣蝶 (2013-11-05 22:51) 

夏炉冬扇

こんばんは。
テレビ中継見てた世代です。
by 夏炉冬扇 (2013-11-06 17:37) 

伊閣蝶

夏炉冬扇さん、こんばんは。
あのテレビ中継、未だに私も鮮烈に覚えております。
by 伊閣蝶 (2013-11-06 22:19) 

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